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こんな夢を見た vol.3| 森川 いろは

by ツカノマレーベル

第3回 short short story「こんな夢を見た。」受賞作品より

▪ 募集期間 2020/4/3 〜 5/3

▪ 応募総数 695作品

▪ 最終選出作品 10編

その他の受賞作品はこちら

こんな夢をみた。

小さなポケットが落ちていた。

中から出てくるのは私が欲しいもの。

美味しい紅茶にお洋服、新しいお皿。

何でも出てくる不思議なポケット。

嬉しくなって私はポケットをかき回す。

がさがさ、ごそごそ。

(あの人は出てくるかしら。)

二つに割れたビスケット、汚れた映画の半券、ひび割れたアクセサリー。

髪の毛に触れた気がして取り出すと幼い頃に買ってもらった人形だった。名前は、愛ちゃん。

愛ちゃんを片手にもう一度ポケットを探る。

がさがさ、ごそごそ。

もう何も出てこない。

お皿もビスケットも愛ちゃんも。

泣きたくなって中をのぞくと、ポケットは私くらいの大きさになった。

(そうだ、私が入りましょう。)

あの人がこのポケットを拾ったら私が最初に出てくるの。

私が入るとポケットはどんどん小さくなっていく。

私は暗闇の中、愛ちゃんをぎゅっと抱きしめた。

(いつ、あなたに会えるのかしら。)

それまで少し、おやすみなさい。

森川 いろは

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